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霞ヶ浦のアサザ

 投稿者:  投稿日:2018年 8月15日(水)03時38分39秒 KD106128000179.au-net.ne.jp
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  Jun Nishihiro / 西廣 淳 @jnishihiro
https://twitter.com/jnishihiro/status/1028979771022045185
「アサザ」で検索してここ数日の話題が少し見えた。一番驚いたのは「もともと霞ヶ浦には無かったんでしょ?」という意見。山室氏の書いたもののうち、もっとも単純な間違いがかなり流布していることにも驚いたし、多くの人が「もともとあったかどうか」に強いこだわりも持っていることも興味深かった。

https://twitter.com/jnishihiro/status/1028980726513905666
ちなみに山室氏とは現地にも同行したり何度か意見交換をする機会はあったが、いくつか同意できることや勉強になることはあったものの、「まずはアサザ基金をつぶさないと」などと明言されており、倫理的に間違っていると思った。

https://twitter.com/jnishihiro/status/1028981468641423360
何年か前の陸水学会のシンポジウムで話した内容、文章にしておいたほうがいいのかな。あのときは山室さんに続いて私が発表して、本人を目の前に批判したり、自分の師匠や過去の自分も批判したり、とても消耗する講演だった。でも、おかげで自分の中の整理はずいぶん進んだ。

https://twitter.com/jnishihiro/status/1028981818454732802
霞ヶ浦のアサザは自生です。外来種・国内移入種であることを示す証拠はありません。

https://twitter.com/jnishihiro/status/1028982749305008129
霞ヶ浦の各地にアサザは残存していますが、今年は中でも最大の群落が出ませんでした。絶滅したわけではありませんが、とても心配な状況であることは確かです。もちろんアサザ以外にも霞ヶ浦で消えかかっている植物や、もうシードバンクも枯渇してしまった可能性のある種はありますが。

https://twitter.com/jnishihiro/status/1028982935934791683
感覚的なことですが、カドハリイがいちばん心配です。。。

https://twitter.com/jnishihiro/status/1028984229584035846
水生植物の多くが土壌シードバンクをつくるので地上から見えなくなっても復活の可能性はあります。しかしシードバンクにも寿命があります。霞ヶ浦をはじめ、日本の湖沼の水質や水位や湖岸地形が大規模に変化してそろそろ五、六十年が経ちつつある現在、シードバンクの枯渇=真の絶滅が心配です。

https://twitter.com/jnishihiro/status/1028984396462706688
そのことはこの論文に書きました。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hozen/21/2/21_147/_article/-char/ja

抄録
種子や胞子などの散布体を含む湖沼の底質は、地上植生から消失した水生植物を再生させる材料として有用である。ただし、底質中の散布体の死亡などの理由により、地上植生から植物が消失してからの時間経過に伴い再生の可能性が低下する可能性が予測される。しかし、再生可能性と消失からの経過時間との関係については不明な点が多い。そこで、水生植物相の変化と底質中の散布体に関する知見が比較的充実している霞ヶ浦(西浦)と印旛沼を対象に、水生植物の再生の確認の有無と、地上植生での消失からの経過時間との関係を分析した。その結果、地上植生から記録されなくなった植物の再生の可能性は時間経過に伴って急激に低下し、消失から40~50年が経過した種では再生が困難になることが示唆された。散布体バンクの保全は、湖沼の生態系修復において優先すべき課題であると考えられる。

https://twitter.com/jnishihiro/status/1028985310720319488
シードバンクを含む土砂をよい条件の場所に撒けば、少なくともいったんは植物が復活します。その間に新たに種子が生産されれば、シードバンクも更新され、再生の「締め切り」は延長されます。そのような締め切り延長効果について、私の研究室の大学院生が検証研究をしています。霞ヶ浦で。

https://twitter.com/jnishihiro/status/1028986527685042177
あと霞ヶ浦のアサザについては2007年までの状況はこの論文に書きました。そのあとは堤防から眺める程度で、定量的なモニタリングしていません。恥ずかしいばかりですが、今年も「やばいなぁ」とは思いつつも、何もアクションしていませんでした。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S000632070900233X

https://twitter.com/jnishihiro/status/1028989819559395329
ついでに。土壌シードバンクを作らない植物も多いので、その場合は地上個体群こそが重要です。安定した環境で優占する種はつくらないことが多いし、撹乱依存種でも、草原や扇状地の川原など、撹乱が高頻度・定期的な場の植物はつくらないことが多い。撹乱が不定期な場の植物が作りやすい。です。

https://twitter.com/jnishihiro/status/1028996711752945664
アサザと水位管理について。霞ヶ浦での今年の減少を水位と関連付けて解釈するのは困難です。しかし霞ヶ浦で種子からの更新がほとんど生じておらず、遺伝的多様性が低いことは、水位の季節間変動も年間変動も乏しいことと関係している可能性は高いです。なおこの問題はアサザに限りません。

https://twitter.com/jnishihiro/status/1028997437753417728
湖の水位管理と湖岸植生の関係については、地形変化を介した影響(抽水植物帯の面積への影響など)と地表面の冠水パターンを介した影響(主に実生更新への影響)とに分けて考えることができると思います。それぞれ、

霞ヶ浦における水位操作開始後の抽水植物帯面積の減少
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hozen/17/2/17_KJ00008327537/_article/-char/ja/
抄録
霞ヶ浦(茨城県)では1996年以降、霞ヶ浦開発事業の計画にもとづく水位管理が実施され、従来よりも高い水位が年間を通して維持されるようになった。水位上昇に伴って進行すると予測される湖岸の抽水植物帯の衰退の程度と特徴を明らかにするため、行政や関連機関によって取得されたデータを活用して解析した。湖岸の34定点で測定された抽水植物帯の幅(人工護岸から汀線までの距離)の変化を分析した結果、1997年から2010年までの13年間に、9.54±7.71m(平均±標準偏差)の減少が認められた。また植生帯の幅の減少量と、各地点における波高の指標値との間には、有意な正の相関が認められた。優占種にもとづいて識別された抽水植物群落の面積変化を分析した結果、1992年から2002年までの間に顕著に減少していたのは、比高が低く静穏な場所に成立するマコモ群落とヒメガマ群落であった。現在の霞ヶ浦では、「水利用と湖の水辺環境との共存を模索する」ことを目的とした「水位運用試験」として、水位をさらに上昇させる管理が行われているが、これまでの植生帯衰退を考えれば、水位をむしろ低下させ、保全効果を検証する試験こそが必要といえる。



湖の水位操作が湖岸の植物の更新に及ぼす影響(大島賞受賞者総説)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hozen/16/2/16_KJ00007628622/_article/-char/ja
抄録
治水や利水を目的とした湖沼水位の操作による季節的変動パターンの変化が、湖岸の植物の種子による繁殖に及ぼす影響について、霞ヶ浦(茨城県)を例に解説した。霞ヶ浦では水門による水位操作が行われるようになった1970年代以降、それまで生じていた春季における水位低下が失われた。このため、湖岸の抽水植物帯の地表面が冠水しやすくなり、植生帯面積の減少と相まって、そこに生育する植物の発芽セーフサイト(発芽と実生定着に必要な条件を備えた場所)の面積がそれ以前の約24%に減少したと推定された。さらに水位操作が強化された現在の霞ヶ浦湖岸では、湿生植物の実生更新がほとんど生じていないことが確認され、現状の方針による管理が継続されると湖岸の植物の多様性が損なわれることが示唆された。水位管理方針の変更が湖岸の植物の発芽セーフサイトの面積に及ぼす影響を単純なモデルを用いて予測した結果、現状から20cm以内で水位を低下させただけでも発芽セーフサイトの大幅な回復が見込めることが示唆された。治水・利水・環境を鼎立させた管理のためには、このような生態学的予測を活用するとともに、多様な視点からの検討を経た順応的管理が不可欠である。

で解説しました(日本語)。

 
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